大沼のガン・カモ類(その1)
ガン・カモ類は世界的に広く分布している鳥で、現在150種が知られており、このうち48種が日本で確認されています。七飯町の大沼周辺ではそのほぼ半数に当たる25種と1亜種が確認され、これらは冬期に多く観察できます。今回、大沼で観察されるガンカモ類について、特に形態的及び生態的特徴を加え、大沼の環境変化がこれらの鳥たちにどのような影響をもたらしてきたかを紹介したい。
大沼で観察されるガン・カモ類
ガン・カモ類は世界的に広く分布している鳥で、体は太っており、首は長く、嘴(くちばし)は上下とも扁平で、その縁には櫛状の板歯をもっています。この板歯は、餌を含んだ泥水を取り込んだ後、泥を吐き出し餌だけを取る役目をします。嘴(くちばし)の先端には爪状の嘴爪(はしづめ)と呼ばれる突起があり、体羽の手入れに役立っています。(図1 参照)
一般的に、ハクチョウやガン等の大型及び中型のガン・カモ類は、翼は細長く、飛翔力が強く長距離を飛ぶのに適していると考えられます。フィールドで、長く首を伸ばし編隊を組んで群れが飛んでいくのを見たら、この種類と思って間違いない。
また、水かきが発達しており、体の後ろの方に脚があるため泳ぐのに適しているガンカモ類には、雄雌によって色彩が著しく異なるグループと雄雌が同色のグループに大別されます。雄雌で色彩が異なるグループのオスは、特徴のある派手目の色彩をしており、メスは褐色の地味な色彩となります。さらに、このグループのオスは非繁殖期の晩夏から初秋にかけては、メスに似た地味な色彩をしており、この状態をエクリプス〔eclipsplumage〕と呼びます。彼らは、一般に繁殖地からより暖かい南方へ群れをなして季節移動する渡り鳥になります。
大沼で観察されるガン・カモ類は、本州以南の越冬地へ渡る時期と越冬を終え繁殖のため北へ渡る時期に、途中休息している個体がほとんどと思われます。長年の観察から、大沼で繁殖が確認されているのは、このうちでオシドリ、マガモ、カルガモ、キンクロハジロの4種類に限定されます。
【寄稿】日本鳥類標識協会 田中正彦